付き合ってくださいと言わないから、別れましょうもいらないと思ってた。
「ここにはもう来ません。用事がないので。」
鍵を返した。
たぶん、青春だった。
こんなに長い時間を一緒に暮らす人はいないかもしれない。
終わった。
今じゃないけど。
ずっと前から、終わっていたけど。
驚くことに、
わたしはわたしよりも彼が好きだった。
でもそのことと、
わたしがわたしを嫌いになることは同意語ではない。
わたしを苦しめる人を、わたしより愛してはならなかった。
ごめんなさい、わたし。
我慢強さは恋愛においては致命傷になりえる。
死ななくてよかった。
時間はたくさん無駄にしたけど。
代わりにたくさん時間を殺してしまった。
厳密には終わってない。
始まりは曖昧だったから、終わりも曖昧が丁度よいとは思う。
今の彼には、言いたいことが一つもない。
ありがとうも、ごめんなさいも、さようならも。
何も最初から始まってなかったから。
終わりだってない。
ただ、お互いに流れた時間が重なった。
それだけだった。
それだけで尊い気がするけど。
始まってない。終わってない。何も、ない。
風が吹いている。空気が入れ替わる。そこには何もない。
好きだった。ただ、ただ、好きだった。
何がとかどこがとかどれくらいとか何も分からないけど。
分からないから、好きだったのかもしれない。
いつかきっと苦しかったことの何もかも忘れて、
恋をするんだろうか。
もうそんな体力も時間も自信もないから、
穏やかに慈しみあいながら誰かと生きてみたい。
それはそれで別の筋肉を使うような気もする。
思考することから逃げた脳と、
だらけきった肉体では、何も得られまい。
いつか死ぬし、記憶も薄れるけど、
考えることも、筋トレも絶対やめまい。
とにかく生きる。
生きることに絶望しない。
よりよく生きるための決断に躊躇しない。
戒めの日記。